前年の年収をもとにした新年度の「後期高齢者医療保険料決定通知書」が市役所から送付されてきました。
後期高齢者医療制度と保険料決定について見ていきたいと思います。
後期高齢者医療制度とは
平成20年度よりスタートした75歳以上の後期高齢者全員が加入する医療保険制度です。対象となる高齢者は個人単位で保険料を支払います。
被保険者
- 75歳以上の方(75歳の誕生日当日から資格取得)
- 65歳以上74歳以下の方で、寝たきり等一定の障害があると認定された方(認定日から資格取得)
これらの方々は、加入中の医療保険(健康保険組合、国民健康保険 等)から脱退し、後期高齢者医療制度に加入します。
運営
都道府県ごとに後期高齢者医療広域連合を作り全市町村が加入します。この広域連合が制度を管理運営し、市町村役場が窓口業務を行います。
財源
各広域連合ごとに、後期高齢者の医療にかかる費用を以下の割合で分担します。
- 75歳以上の被保険者の保険料…約1割
- 現役世代の国民健康保険・健康保険組合の後期高齢者支援金…約4割
- 公費…約5割
(内訳)国:都道府県:市町村=4:1:1
後期高齢者医療制度の保険料
保険料は、75歳以上の後期高齢者一人ひとりが納めます。
被保険者全員が均等に負担する均等割額と所得に応じて負担する所得割額の合計金額になります。
各広域連合ごとに後期高齢者医療にかかる費用が異なるため、均等割額と所得割率も広域連合すなわち都道府県ごとに異なります。
保険料の計算方法
保険料=均等割額+所得割額
所得割額=(総所得金額-33万円)×所得割率
令和元年度の全国平均
均等割額:45,116円
所得割率:8.81%
保険料(収入が公的年金だけの場合)
=均等割額+所得割額
=45,116+(年金所得-33万)×8.81%
=45,116+(年金収入-120万-33万)×8.81%
※年金所得=年金収入-公的年金控除
※年金収入330万円未満の公的年金控除は120万円
保険料の上限額は62万円です。収入が公的年金収入153万円以下のみの場合は所得割額は課されません。
軽減措置 (令和元年度)
世帯の所得水準によって、保険料の「均等割額」が軽減されます。
軽減判定の基準となると所得は、65歳以上の公的年金受給者の場合、年金所得から15万円が控除されます。軽減判定所得は所得割額を算出する際の所得とは異なります。
年金収入330万円未満の場合
軽減判定所得=年金収入-120万-15万
均等割額 軽減内容 | 世帯内の被保険者および世帯主の 総所得金額(軽減判定所得)の合計額 |
---|---|
8割軽減 | 33万円以下 (注)被保険者全員が年金収入80万円以下 その他各種所得がない場合 令和2年度に7割軽減に改定予定 |
8.5割軽減 | 33万円以下 令和2年度に7.75割軽減に、 令和3年度に7割軽減に改定予定 |
5割軽減 | 「28万円×被保険者数+33万円」以下 |
2割軽減 | 「51万円×被保険者数+33万円」以下 |
8割軽減と8.5割軽減でいわば軽減条件の逆転が起きていますが、8割軽減の対象者には、年金生活者支援給付金の支給、介護保険料の軽減強化といった支援策があります。
これまで職場の健康保険などなどの被扶養者で自分の保険料を納めていなかった人も、75歳になると後期高齢者医療制度の被保険者となり、新たに保険料を負担することになります。
この場合、保険料が急に増えることのないよう、加入から2年を経過する月まで被保険者均等割額を5割軽減します。所得割額はかかりません。
1人世帯の保険料(年額)
収入が公的年金だけの1人世帯の保険料を計算します。実際には端数処理があります。
- 年金収入80万円の場合
軽減判定:8割軽減
年金所得=0円
保険料
=均等割(8割軽減)+所得割(0円)
=45,116×0.2+0
=9,023円 - 年金収入168万円の場合
軽減判定所得
=168万-120万-15万
=33万<8.5割軽減>
年金所得
=168万-120万
=48万
保険料
=均等割(8.5割軽減)+所得割
=45,116×0.15+(48万-33万)×8.81%
=6,767+13,215
=19,982円 - 年金収入196万円の場合
軽減判定所得
=196万-120万-15万
=61万<5割軽減 28万+33万>
年金所得
=196万-120万
=76万
保険料
=均等割(5割軽減)+所得割
=45,116×0.5+(76万-33万)×8.81%
=22,558+37,883
=60,441円 - 年金収入219万円の場合
軽減判定所得
=219万-120万-15万
=84万<2割軽減 51万+33万>
年金所得
=219万-120万
=99万
保険料
=均等割(2割軽減)+所得割
=45,116×0.8+(99万-33万)×8.81%
=36,093+58,146
=94,239円
夫婦2人世帯の夫の保険料
収入が公的年金だけで妻の年金額が80万円な場合の夫と妻の保険料です。実際には端数処理があります。
妻の軽減判定所得=0円
妻の年金所得=0円万円
- 夫の年金収入 80万円
均等割:8割軽減
所得割額:夫0円
保険料(夫・妻とも)
=均等割(8割軽減)+所得割(0円)
=45,116×0.2+0
=9,023円 - 夫の年金収入168万円の場合
軽減判定所得
=168万-120万-15万
=33万<8.5割軽減>
年金所得
=168万-120万
=48万
保険料(夫)
=均等割(8.5割軽減)+所得割
=45,116×0.15+(48万-33万)×8.81%
=6,767+13,215
=19,982円
保険料(妻)
=均等割(8.5割軽減)+所得割
=45,116×0.15+0
=6,767円 - 年金収入224万円の場合
軽減判定所得
=224万-120万-15万
=89万<5割軽減 28万×2+33万>
年金所得
=224万-120万
=104万
保険料(夫)
=均等割(5割軽減)+所得割
=45,116×0.5+(104万-33万)×8.81%
=22,558+62,551
=85,109円
保険料(妻)
=均等割(5割軽減)+所得割
= 45,116×0.5+0
=22,558円 - 年金収入270万円の場合
軽減判定所得
=270万-120万-15万
=135万<2割軽減 51万×2+33万>
年金所得
=270万-120万
=150万
保険料(夫)
=均等割(2割軽減)+所得割
=45,116×0.8+(150万-33万)×8.81%
=36,093+103,077
=139,170円
保険料(妻)
=均等割(2割軽減)+所得割
=45,116×0.8+0
=36,093円
都道府県ごとの保険料
広域連合(都道府県)ごとの後期高齢者医療制度の費用の約1割が保険料によりまかなわれます。
したがって、各広域連合ごとに保険料の負担にかなりの違いが出てきます。
都道府県ごとの均等割額と所得割率
年金188万円の場合の年間保険料も計算しています。均等割は5割軽減になっています。
都道府県 | 均等割額 | 所得割率 | 年金188万円 保険料 |
---|---|---|---|
全国 | 45,116 | 8.81 | 53,300 |
上位5件 | |||
福岡県 | 56,085 | 10.83 | 65,900 |
高知県 | 54,394 | 11.42 | 67,100 |
徳島県 | 52,913 | 10.34 | 62,600 |
山口県 | 52,444 | 10.28 | 62,200 |
佐賀県 | 51,800 | 9.88 | 60,400 |
下位5件 | |||
山梨県 | 40,490 | 7.86 | 47,700 |
静岡県 | 40,400 | 7.85 | 47,600 |
秋田県 | 39,710 | 8.07 | 48,100 |
茨城県 | 39,500 | 8.00 | 47,700 |
岩手県 | 38,000 | 7.36 | 44,700 |
新潟県 | 36,900 | 7.40 | 44,300 |
年金収入188万円の場合、都道府県により最大2万円以上の差があります。
父の場合は…
収入(平成30年)
厚生年金:2,410,750円
恩給 : 568,400円
合計 : 2,979,150円
年金所得
2,979,150-1,200,000
=1,779,150円
軽減判定所所得
1,779,150-150,000
=1,629,150円
→軽減なし
保険料
均等割額(軽減なし)
+(1,779,150-330,000)×所得割率
=179,400円
特別徴収(年金天引き)で納付します
保険料は年6回の年金支給日に年金から天引きされます。
4・6・8月は昨年度の徴収額で納付し、残りの額を10・12・2月で納付します。
4・6・8月 各36,000円
10・12・2月 各23,800円