父は毎月分配型投資信託を回転売買していた…させられていた…

南アルプス悪沢岳夜明け
南アルプス悪沢岳夜明け

2018年5月、90歳代後半の父が体調を崩し入院し、その後老人ホームに入りました。

入院中、父の希望で購入していた投資信託を解約しました。

父が購入していた毎月分配型投資信託
2018年5月、90歳台後半の父が体調を崩し入院し、その後老人ホームに入りました。 入院しているとき、父が持っていた毎月分配型の投資信託を解約しました。その投資信託について記事にします。 入院して数日たった時、持っている投資信託を解約したい...

父が自宅に残していた証券会社の書類を整理して、これまで購入してきた投資信託を調べてみました。

父は退職後60歳代から投資をしてきたようですが、書類がしっかり残っている2012年からの毎月分配型投資信託の売買記録をまとめてみました。

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6年間で6回、毎月分配型投信を売買していました

日付銘柄売買取引金額 手数料
12/01/25投信A9,520,074290,724
12/02/27投信A10,173,150
12/02/27投信B10,901,840386,440
13/02/04投信B10,582,100 
13/02/04投信A10,858,342331,592
13/10/23投信A9,723,150 
13/10/23投信C9,502,062336,822
14/03/10投信C9,822,960 
14/03/10投信D9,700,000343,837
15/09/08投信D8,284,671 
15/09/08投信E8,500,000309,597
18/05/18投信E5,506,235 

こんな投資信託です

購入していたのは、こんな投資信託です。

インデックス投資とは真反対にある毎月分配型アクティブ投資信託のオンパレードです。購入手数料、信託報酬とも驚きの高さです。

お父さん、何に投資したのかわかってた?!

投信A:ピクテシンコウコクインカム

ピクテ新興国インカム株式(毎月決算型)
投信会社名:ピクテ投信投資顧問
カテゴリー:国際株式・新興国・ヘッジ無し
購入時手数料率(税込):3.24%
信託報酬率(税込):1.99%

投信B:チャイワン

中華圏株式ファンド(毎月分配型) 『愛称:チャイワン』
投信会社名:日興アセットマネジメント
カテゴリー:国際株式・中国・ヘッジ無し
購入時手数料率(税込):3.78%
信託報酬率(税込):1.73%

投信C:オウシュウハイイールドユーロ

欧州ハイ・イールド債券(毎月決算型)ユーロ
投信会社名:岡三アセットマネジメント
カテゴリー:国際債券・ハイイールド債・ヘッジ無し
購入時手数料率(税込):3.78%
信託報酬率(税込):1.70%

投信D:ピクテグローバルインカム

ピクテ・グローバル・インカム株式(毎月分配)
投信会社名:ピクテ投信投資顧問
カテゴリー:国際株式・グローバル・含む日本・ヘッジ無し
購入時手数料率(税込):3.78%
信託報酬率(税込):1.79%

投信E:アジアハイイールドプラス

アジアハイ・イールド・プラス(毎月分配)(ヘッジ無)
投信会社名:岡三アセットマネジメント
カテゴリー:国際債券・ハイイールド債・ヘッジ無し
購入時手数料率(税込):3.78%
信託報酬率(税込):2.00%

売買ごとに3%を越える購入手数料がかかっています

例えば、

投信E:アジアハイイールドプラス

  • 2015/09/08 買付
  • 口数:6,048,149口
  • 約定価額:13,542円
  • 評価額:8,190,403円
  • 購入費:8,500,000円
  • 購入時手数料:
    8,500,000-8,190,403=309,597円
    309,597÷8,190,403=3.78%

この投資信託の目論見書では購入手数料の上限が税抜3.5%、当時の消費税8%込みで3.78%となっており、上限額いっぱいの手数料が取られています。

購入するのに手数料が30万円!

6回の買付で手数料合計200万円

この6回の買付の購入手数料は、合計1,999,012円になります。

購入手数料は、目論見書によって上限が設定され、販売会社がその範囲内で独自に定めることになっていますが、6回とも上限額の手数料が取られています。

私が購入しているインデックス投資信託はすべてノーロード(購入手数料無料)です。

購入手数料の高さにあきれるばかりです。

なんと1ヶ月で買い替えています

「投信A:ピクテシンコウコクインカム」は買い付け後1ヶ月で別の投信に買い替えています。

さらに1年後同じ投信を買い直しています。

この3回の購入で100万円を越える購入手数料が発生しています。

たぶん、父は手数料を含んだ買い替えの金額を提示され、その中にどれだけの手数料が含まれているか理解できていなかったのではないかと思います。

手数料狙いの買い替えとしか思えません….

投資は自己責任?

2012年から2018年まで、証券会社の一人の担当者が通して担当しています。

この表のはじめの日付の2012年、父はすでに90歳を越えていました。60歳代から投資を続けているとはいえ、これらの投資信託が何を対象に投資しているのか、正確に理解しているとは思えません。

毎月分配型の投資信託は複利の効果がまったく働きません。父は年金で十分に生活費が足りているので、毎月分配型の投資信託を選択する必要はありません。

2014年から少額投資非課税制度(NISA)が始まっています。私は2014年からすべての投資信託をNISA口座内で購入しています。父はNISA口座を利用していません。担当者はNISA口座を勧めなかったのでしょうか。疑問です。

父の言い分では、最後に持っていた投資信託は、何回も解約を申し入れたけれど聞き入れてもらえなかったとのこと。実際、入院した病院から、私が間に立って解約の手続きを進めました。

父の投資については、担当者の言いなりになっているのではないかと、私自身も前々から思っていました。ただ、父の気質から、身内の助言を素直に聞くとは思えず、言い出すことができませんでした。

こんなお年寄りがたくさんいるのではないかと危惧します。

こんな営業では代替わりで見向きもされなくなりますよ

担当者も心に忸怩たる思いを持って営業していたのでしょうか。上からのプレッシャーで仕方なく営業していたのかもしれません。年寄りの無知につけ込んだその仕事の虚しさに、半ば同情してしまうところもあります。

このような営業が未来に渡って続けられるとは思えません。代替わりで見放されるだけです。

金融庁も警告しています

金融庁の指導により「毎月分配型投資信託」に対する風当たりが強くなっています。さらに各金融機関に対して「顧客本位の業務運営」の徹底を通達しています。

金融庁長官自らが、金融機関の幹部に向けて、以下のような問題提起をしています。時代は確実に変わっています。

日本証券アナリスト協会主催「第8回国際セミナー」
森金融庁長官基調講演より抜粋

毎月分配型の投信は、引き続き多く販売されていますが、毎月分配型では複利のメリットが享受できないことをお客様に理解してもらった上で投資判断していただくのが「顧客本位」ではないでしょうか。同様に、過去数年間、高い値上がり率を示している投信も人気ですが、こうした投信の販売にあたっては、高値掴みの危険性についても言及するのが「顧客本位」だと思います。

さらに重要なことは、商品に係る販売手数料、信託報酬などのコストをお客様に理解していただくことです。こうしたコストについては、単にパーセンテージで示すのではなく、例えば10万円投資した場合のコストを実額で示す方が「顧客本位」だと思います。こうした話をすると、お客様が正しいことを知れば、現在作っている商品が売れなくなり、ビジネスモデルが成り立たなくなると心配される金融機関の方がおられるかもしれません。

しかし、皆さん、考えてみてください。正しい金融知識を持った顧客には売りづらい商品を作って一般顧客に売るビジネス、手数料獲得が優先され顧客の利益が軽視される結果、顧客の資産を増やすことが出来ないビジネスは、そもそも社会的に続ける価値があるものですか?こうした商品を組成し、販売している金融機関の経営者は、社員に本当に仕事のやりがいを与えることが出来ているでしょうか?また、こうしたビジネスモデルは、果たして金融機関・金融グループの中長期的な価値向上につながっているのでしょうか?

ここ数年、友人から、「母親が亡くなり遺品の整理をしていると、最近購入したと思われる、お年寄りには到底不向きのハイリスクで複雑な投信が、何本も出てきた」という苦情を聞くことがよくあります。もしかすると、そうした投信を売った営業員の方は、親のところにあまり顔を見せない子供たちに代わって、お母様の話し相手になっていたのかもしれませんが、これにより子供たちの当該金融グループに対する評価はどうなったでしょうか?こうした営業は長い目で見て顧客との信頼関係を構築する観点から本当にプラスでしょうか?

森金融庁長官基調講演 全文は以下
https://www.fsa.go.jp/common/conference/danwa/20170407/01.pdf