特別支給の老齢厚生年金とは?支給開始年齢は?(2023年6月改定)

北アルプス 双六岳への道 老齢厚生年金

この記事は2019年4月に公開しましたが、2023年6月に改定しました。

老齢厚生年金は、本来は、老齢基礎年金に上乗せする形で65歳から支給されます。

「特別支給の老齢厚生年金」は、支給開始年金を65歳に引き上げる際の移行措置として、65歳になるまでの間だけ特別に支給されます。

昭和29年(1954年)生まれの私は、61歳になった平成27年(2015年)から受給しています。

この「特別支給の老齢厚生年金」を詳しく見ていきたいと思います。

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特別支給の老齢厚生年金とは…

昭和61年度(1986年度) から基礎年金制度が導入され、年金制度が大幅に変わりました。

国民年金は全国民共通の基礎年金となり、厚生年金は基礎年金に上乗せされる報酬比例年金になりました。

厚生年金加入者の老齢年金は旧制度では厚生年金(定額部分+報酬比例部分)となっていましたが、定額部分が基礎年金に置き換わり、基礎年金+厚生年金(報酬比例部分)になりました。

昭和60年度までの支給開始年齢は、厚生年金が女性55歳・男性60歳、国民年金が男女とも65歳でした。

厚生年金加入者の支給開始年齢を65歳に引き上げるための移行措置として導入されたのが特別支給の老齢厚生年金です。

老齢基礎年金の受給資格期間(10年)があり、厚生年金保険等に1年以上加入していれば、男性、女性それぞれの支給開始年齢から支給されます。

特別支給の年金額

特別支給の老齢厚生年金は、旧制度の老齢厚生年金の年金額の算出法に準じて「定額部分+報酬比例部分」が支給されます。

定額部分

旧老齢厚生年金定額部分
=1,626円×厚生年金加入期間の月数
※金額は平成31年度

定額部分は上記の式で算出されますが、定額部分の支給開始年齢の引き上げは平成31年(令和元年・2019年)3月で終了しています。

平成31年4月以降、「長期加入者特例」の場合などを除き、「特別支給」で定額部分を受給している人はいません。

報酬比例部分

報酬比例部分は、在職時の平均報酬月額に一定乗数をかけて算出します。

詳しい算出方法は以下のページをご参照ください。

特別支給の老齢厚生年金の支給額を自分で計算してみました
1954年(昭和29年)8月生まれの私の場合、61歳の誕生日の翌月すなわち2015年9月から特別支給の老齢厚生年金を受給しています。 この特別支給の年金は、老齢厚生年金の報酬比例部...
自身の報酬額全記録から厚生年金の本来水準と従前額保障の2通りの年金額を計算しました
私は2015年9月から特別支給の老齢厚生年金を受給しています。この特別支給の年金は、老齢厚生年金の報酬比例部分が支給されます。 報酬比例部分の計算には、本来水準・従前額保障の2通り...

支給開始年齢の引き上げ

定額部分の引き上げは終了

特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢は、男性・女性、定額部分・報酬比例部分のそれぞれで段階的に引き上げられています。

定額部分の支給は、昭和29年4月1日生まれの女子への支給を最後に、平成31年(令和元年・2019年)4月で終了しました。

平成31年4月2日以降、障害者・長期加入者特例対象者を除き、65歳未満の特別支給の老齢厚生年金で定額部分を受給している人はいません。

定額部分支給の特例

障害等級3級以上の障害者で退職した人、厚生年金保険の被保険者期間が44年以上の長期加入者で退職した人は、報酬比例部分の老齢厚生年金の支給開始年齢から、「定額部分+報酬比例部分」が支給されます。

報酬比例部分の引き上げ

以下のスケジュールで報酬比例部分の引き上げが進んでいます。

生年月日開始年齢
【男性】S24/4/2~S28/4/1
【女性】S29/4/2~S33/4/1
60歳
【男性】S28/4/2~S30/4/1
【女性】S33/4/2~S35/4/1
61歳
【男性】S30/4/2~S32/4/1
【女性】S35/4/2~S37/4/1
62歳
【男性】S32/4/2~S34/4/1
【女性】S37/4/2~S39/4/1
63歳
【男性】S34/4/2~S36/4/1
【女性】S39/4/2~S41/4/1
64歳
【男性】S36/4/2以降
【女性】S41/4/2以降
65歳
(特別支給なし)

男女別、生年月日別で支給開始年をみると、以下の通りになります。

▼男性の特別支給

生年月日開始年齢受給権発生
1949年4月2日~60歳2009年4月2日~
1950年4月2日~60歳2010年4月2日~
1951年4月2日~60歳2011年4月2日~
1952年4月2日~60歳2012年4月2日~
1953年4月2日~61歳2014年4月2日~
1954年4月2日~61歳2015年4月2日~
1955年4月2日~62歳2017年4月2日~
1956年4月2日~62歳2018年4月2日~
1957年4月2日~63歳2020年4月2日~
1958年4月2日~63歳2021年4月2日~
1959年4月2日~64歳2023年4月2日~
1960年4月2日~64歳2024年4月2日~
1961年4月2日~65歳2026年4月2日~

▼女性の特別支給

生年月日支給開始受給権発生
1954年4月2日~60歳2014年4月2日~
1955年4月2日~60歳2015年4月2日~
1956年4月2日~60歳2016年4月2日~
1957年4月2日~60歳2017年4月2日~
1958年4月2日~61歳2019年4月2日~
1959年4月2日~61歳2020年4月2日~
1960年4月2日~62歳2022年4月2日~
1961年4月2日~62歳2023年4月2日~
1962年4月2日~63歳2025年4月2日~
1963年4月2日~63歳2026年4月2日~
1964年4月2日~64歳2028年4月2日~
1965年4月2日~64歳2029年4月2日~
1966年4月2日~65歳2031年4月2日~

実際の年金は、受給権発生の翌月分から支給されます。

私は昭和29年(1954年)8月生まれで、2015年8月で61歳となり、9月分から特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)を受給しています。

支給開始年齢になったとき

支給開始年齢に達し、特別支給の老齢厚生年金を受け取る権利が発生する方には、支給開始年齢に到達する3か月前に、「年金請求書(事前送付用)」及び年金の請求手続きの案内が日本年金機構から送付されます。

法律的には誕生日の前日に1歳年を取ることになるので、誕生日の前日に受給権が発生します。

実際の年金受給手続きは、受給権発生日以降に交付された戸籍謄本・住民票を入手してからになります。

提出は地域を担当する年金事務所または街角の年金相談センターになります。

例えば8月2日生まれの人は、8月1日受給権発生、9月分より支給開始、11月15日初回入金、となります。

年金支給は偶数月の15日ですが初回に限り奇数月支給もあります。

8月1日生まれの人は7月31日に受給権が発生し、8月分から支給されます。

特別支給の老齢厚生年金の受給手続き

私が実際に手続きした時の記事です。

61歳になり特別支給の老齢厚生年金の請求手続きをしました
昭和60年の法律改正により、 厚生年金保険の支給開始年齢が60才から65才に引き上げられました。支給開始年齢を段階的に、スムーズに引き上げるために設けられたのが「特別支給の老齢厚生...

特別支給の老齢厚生年金の注意点

厚生年金に1年以上加入していること

老齢基礎年金の受給資格期間(10年)があること、厚生年金に1年以上加入していたことが必要です。

繰下げはできません

65歳からの本来支給の年金と異なり、繰下げ受給はできません。繰下げするつもりで受給申請をしない場合も年金額の増額はありません。

繰上げはできますが…

60歳以降、特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢までの間で繰上げ受給することができます。

ただし、その場合同時に老齢基礎年金の繰上げも手続きすることになります。

繰上げの場合、1ヵ月の繰上げにつき0.5%減額されます。

特別支給の開始年齢が63歳の人が61歳から繰上げ受給する場合

  • 特別支給年金(報酬比例部分)
    …2年分12%減額
  • 老齢基礎年金
    …4年分24%減額

なお、昭和37年(1962年)4月1日以前生まれの方の減額率は1ヵ月につき0.5%ですが、2022年4月から、昭和37年4月2日以降生まれの人の減額率は1ヵ月につき0.4%になりました。

在職老齢年金

在職して厚生年金に加入しながら老齢厚生年金を受け取る場合は、「在職老齢年金」という制度により、給与と年金額に応じて、年金の一部または全部が支給停止になる場合があります。

65歳未満の場合、給与月額と年金月額の合計が 28万円 48万円 を超えると年金の支給停止額が発生します。(2022年4月より支給停止額が引き上げられました)

詳しくはこちら(日本年金機構)
在職老齢年金の計算方法

厚生年金基金の「代行部分」

厚生年金基金は企業が独自に運用管理する年金です。

この厚生年金基金には本来国の厚生年金に納付する部分の一部を預かり運用管理する「厚生年金の代行部分」があります。

「厚生年金の代行部分」の老齢年金が特別支給の老齢厚生年金と同時に支給開始となります。

代行部分の老齢年金の受給申請はその資産がどこにあるかによりの申請先が異なります。

基金が解散していて代行部分が国の厚生年金に移管されている場合は特別支給の老齢厚生年金に含まれて支給されますが、以下の場合は別途に申請手続きが必要です。

  • 基金が存続している場合
    基金に申請
  • 基金が解散して資産が企業年金連合会に移管されている場合
    企業年金連合会に申請
  • 基金を短期間で脱退した「中途脱退者」
    企業年金連合会に申請

詳しくはこちら(日本年金機構)
厚生年金基金加入期間がある方の年金

元OLの皆さん、中途退職者の厚生年金基金を忘れていませんか!
数年前、私が60歳に近づいてきた頃、年金についていろいろと調べ始めていました。 そのとき、妻の年金手帳の間に、妻が結婚前に事務職として勤めていた会社の「厚生年金基金加入員証」を見つ...

受給手続きを忘れた場合は

年金の時効は「5年」です。

特別支給の老齢厚生年金を、「知らなかった」「繰上げ受給の申請と間違えていた」「繰下げ受給するつもりだった」などで申請しなかった場合は、5年以内の範囲であれば全額支給されます。

年金は「申請主義」です。申請して初めて受給開始となります。

特別支給の受給者が65歳になるとき

65歳未満で特別支給の老齢厚生年金を受給している人には、65歳の誕生日の月に年金の繰下げ受給を希望するかどうかのハガキが送られてきます。

老齢基礎年金と老齢厚生年金は別々に繰下げ受給できるので、どう希望するかでハガキを出すか出さないかが変わります。

少しややこしいですが、「両方とも65歳からの受給を希望する場合」と「片方のみ受給してもう片方を繰下げ希望する場合」に返送することになります。

両方とも繰下げを希望する場合はハガキを返送しないことになります。

ハガキを返送しない場合は、両方とも繰下げを希望しているとみなされて本来支給が始まりません。

ただし、単に忘れた場合や事情の変化等で65歳からの受給を希望する場合は、5年以内であれば65歳からその時点までの年金額を一括受給することが可能です。

65歳の誕生日を前に年金請求書を提出しました、繰下げする?しない?
65歳になる前に「特別支給の老齢厚生年金」を受給している人は、65歳から本来支給の老齢年金の受給が始まりますが、その際に繰下げ受給を希望するかどうかを確かめるために、「年金請求書」...

まとめ

  • 特別支給の老齢厚生年金は65歳未満で報酬比例部分が支給される
  • 支給開始年齢は生年月日に応じて段階的に引き上げられている
  • 繰下げ受給はできない
  • 繰上げ受給はできるがその場合は老齢基礎年金も繰上げ手続きすることになる
  • 在職者は在職老齢年金の制度で一部支給停止になることもある
  • 厚生年金基金加入者は代行部分が同時に支給開始になる